研究概要 |
ある特殊な組合せの電解質水溶液/有機液体を選んでその界面に微動装置を用いてカソードを固定して水溶液をカソード還元させると,金属が界面に沿って花びらのような形態になって成長することがある。金属種と濃度,有機液体の種類,温度,電圧,電流の印加法などを変化させてこの現象を詳しく調べた。その結果,実験条件によっては薄膜生成物が得られることがあり,これまで,Zn,Co,Cu,Ag,Auなどの金属薄膜を得ることができた。典型例として水溶液として3moldm^<-3>の硫酸亜鉛,有機液体として酢酸ブチルを選び,30℃でIVの定電圧印加すると,数μm厚さの薄膜状亜鉛が生成した。有機液体としては薄膜が浮上しやすい条件,すなわち界面張力が大きくなるような液体が適すること,温度は高く,印加電圧は低いほうが薄膜生長しやすかった。これらの薄膜生成はこれまで全く知られていなかった現象で,新しい金属薄膜製造法としての応用が示唆された。 そこで上記の現象の応用として連続的な薄膜成長を試みた。ステッピングモータに取付けたアルミニウム薄膜を界面に浮かべ,カソード極とし,それと垂直にアノード極を配置し,電圧印加により,界面に沿ってカソードからアノードに向って金属薄膜を一方向成長させた。得られた薄膜をモータで巻上げることにより連続的に膜成長させることが可能になった。 この2液相界面電析法は全く新しい薄膜製造法である。この方法では自由界面における薄膜成長であるため,これまで電析その他の方法で得られた薄膜製造法のように基板からはぎ取る工程が不要である。また,得られた結晶は成長方向が界面方向に制約されているため,特定の結晶面に優先成長させることが可能で結晶制御できる。これらのことから,この薄膜製造法は今後,機能性薄膜製造法としての応用が考えられる。
|