研究概要 |
変態誘起塑性(TRIP)型高強度複合組織鋼板を乗用車の足回りの複雑形状部品として積極的に適用し,車体軽量化による燃費改善を達成することを目的として,温間加工および加工熱処理によるプレス成形性の改善を検討した。また,低サイクルおよび高サイクル疲労特性の評価を行った。 張り出し性および穴広拡げ性は室温から200℃以下の温度域での温間加工により著しく改善された。残留オーステナイト(γ)中の炭素濃度が高い(Ms点が低い)鋼ほど,室温に近い成形温度で高い成形性を生じた。このとき,残留γ体積率の効果は単軸引張変形の場合に比較して小さい。 α+γ2相域で高速・高圧下を加えた加工熱処理を施すことにより,残留γ体積率fγを50%程度増加し,かつ結晶粒径(約5μm→1〜2μm)を微細にすることができた。このとき,残留γ中の炭素濃度Cγは少し減少したが,残留γ中の全炭素濃度(fγ×Cγ)は増加した。この加工熱処理の効果は,成形性が良好となる低Mn鋼,または低Si鋼で顕著に生じた。 TDP鋼の低サイクル疲労では,残留γのひずみ誘起変態と母相/第2相強度の差から生ずる内部応力により,大きな疲労硬化が認められた。この疲労硬化量は,使用温度が高いほど小さくなった。高サイクル疲労強度も使用温度に強く影響されたが,温度が高いほど耐久限が増加するこという新知見を得た。
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