研究概要 |
1.報告者らは、膨潤性を示すユニ-クな合成雲母であるフッ素四ケイ素雲母の層間カチオンの一部が熱反応によってその交換性を失い、交換サイトであるシリケ-ト面上の六方酸素格子に不可逆的に化学結合する現象(層間カチオンの固着)を初めて見いだした。これにアルミニウムポリカチオン(Al_<13>)を用いて層間に架橋を施したのち加熱焼成すると、ミクロ化多孔性セラミックスが合成できる。固着を行わない多孔体は化学的に不活性であるが、ランタンなどのカチオン固着によりその酸触媒活性は数十倍へと飛躍的に向上する。今回、カチオンとして周期律表上の広範な元素を取り上げ検討した結果、(1)イオン半径が小さいカチオンほど固着が起きやすいため、大きな層電荷の減少が生じ架橋がされにくい。一方、半径が大きいほど固着が起きにくく大量のアルミニウム架橋剤が取り込まれる。交換サイトである六方酸素空隙のサイズ約1.2Åに近い半径を持つカチオン(例えばLa,Ca,Pbなど)において、適量のカチオンの固着と架橋剤の取り込みが同時に生じるため高活性を有する酸触媒となること、(2)アルミニウムポリカチオンの代わりに架橋剤としてシリカ-チタニアの混合カチオンゾルを用いた場合にも、やはり層間の固着に伴う顕著な酸触媒活性の増加が起こることがわかった。活性、比表面積、酸量のいずれもがカチオンの半径が、やはり約1.2Åのカチオン(例えばLa,Pb,Yなど)において大きな値を示す。なお、酸触媒能はメタノ-ルによるトルエンのアルキル化反応によって評価したが、その反応の進行追跡のための定量分析には設備備品であるガスクロマトグラフを使用した。 2.ホスト粘土として最も良く知られたモンモリロナイトやフッ素四ケイ素雲母と同じ層電荷を持つが八面体シ-トにMgの欠損のないテニオライトでは、層間カチオンの固着現象は起こらない。ところが、非膨潤性のタルクにケイフッ化ナトリウムを反応させて合成したフッ素雲母においては、フッ素四ケイ素雲母におけると同様な固着が生じることを新たに見いだした。
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