研究概要 |
火山灰土壌は、農業のみならず、土木、建築、都市計画、環境科学など広い分野に係わりの深い土壌である。この土壌について、不明な点の多い生成作用等の諸知識を得ることは重要な課題である。土壌の主要粘土成分であるアロフェンやイモゴライトに関して、これらの成分の相対的生成関係を司る要因を、実験シミュレ-ションおよび計算シミュレ-ションによって調べた。イモゴライトの人工合成系に、陽イオンを混入して反応を行った混入量が多くなるに従って、イモゴライトは生成量が減少した。イモゴライトの減少に応じてアロフェンの生成量が増大した。イモゴライトの生成を阻害し、アロフェンを生じやすくする陽イオンの能力は、アルカリ土類金属のMg,Caで大きく、アルカリ金属のK,Naでは小さかった。この能力は、陽イオンのイオンポテンシャル、加水分解定数、キレ-ト生成定数など数値デ-タをもとに計算した結果とほぼ合致した。このことから、共存する陽イオンはイモゴライトとアロフェンの形成を左右する要因になることがわかった。最近、アロフェンおよびイモゴライトを含まず、2:1型あるいは2:1型ー2:1:1型中間種の結晶性鉱物が主要粘土成分となっている火山灰土壌が東北地方を中心に数多く発見されている。そこで、前述の合成系に、モンモリロナイトを量を変えて添加し反応させた。モンモリロナイトを加えなかった合成系では、イモゴライトが主な生成物であった。加えた時には、その量が多くなるに従って、イモゴライトは生成量が減少した。また、モンモリロナイトは、反応後に、ヒドロキシアルミニウムあるいはヒドロキシアルミニウムーケイ酸錯体と思われるものを層間に含む複合体に変化していた。これは、結晶性層状ケイ酸塩鉱物であるモンモリロナイトはイモゴライトの生成を阻害することを示す。この原因は、イモゴライトの材料または前駆体がモンモリロナイトの層間に捕捉されることにある。アロフェンやイモゴライトをほとんど含有していない火山灰土壌は、その生成初期になんらかの理由でモンモリロナイトのような2:1型層状ケイ塩鉱物が存在あるいは混入し、風化生成過程がこの鉱物によって影響を受けて生じた土壌と考えるができる。
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