研究概要 |
シイタケの正常子実体と傘形成異常子実体の形成過程において、子実体およびほだ木内の無機元素(N,P,K,Mg,Ca,Mn,Fe,ZnおよびCu)の動態を調査した。 1,正常子実体の無機元素含量(乾燥重量あたり)は幼子実体で高く,肥大生長にともなって低下する傾向が認められた。傘形成異常子実体のCa含量は正常な幼子実体の含量と同程度,またMn含量はいずれの生長段階の正常子実体の含量よりも高かった。しかし,その他の元素含量は展開生長を始める前の正常子実体の傘の含量と同程度であった。 2,ほだ木の無機元素含量は子実体発生前において、N,PおよびKが正常な成熟子実体の1/10以下,CaおよびMnは逆に子実体のそれぞれ7倍以上のレベルにあった。子実体直下部の元素含量はおおむね子実体の生長初期に増大し,子実体から4cmおよび10cm離れた場所においても,子実体の生長にともなう元素含量の変動が認められた。これらのことから,子実体の周辺から生長部位への無機元素の移動・集積が推察された。一方,傘形成異常子実体直下部のほだ木内の無機元素含量は正常子実体直下部の値と大差ないものであった。 3,シイタケのほだ木およびブナ木粉培養物のN,PおよびK含量を高めると子実体発生量が増大する傾向を示した。しかし、発生した子実体のこれら3元素の含量に大きな変化は認められなかった。一方,基質のCaおよびMn含量を高めた場合,子実体の両元素の含量は基質含量に対応して大幅に増大したが,傘形成の異常な子実体は発生しなかった。したがって,傘形成が異常な奇形子実体の形成は,少なくとも細胞のCaやMn濃度の増大のみによって生じるのではないことが明らかとなった。
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