研究概要 |
1.褐藻の仲間で特に配偶子の雌・雄の区別が匂いによって可能な褐藻カヤモノリ科ワタモ(Colpomenia bullosa)、カヤモノリ(Scytosiphonlomentaria、Scytosiphon sp.)、ナガマツモ科マツモ(Analipusjaponicus)に着目し、厳密に選別されたワタモ雌性配偶体を光照射・冷暗処理して人為的に雌性配偶子を放出させ、その配偶子が完全に着床した後に分泌性フェロモンを抽出し、その構造は(1R,2R)-trans-1-(1E,3Z-hexadienyl)-2-vinylcyclopropaneであることが初めて明らかとなった。 2.ワタモ、カヤモノリ、マツモの分泌物をGC、GC-MSで詳細に比較分析し、これら褐藻から分泌される性フェロモンは、ホルモジレン、エクトカルペン、ディクティオテンなどの混合物で、その混合比は種に特有であることを明らかにした。他方、北海道(室蘭)で採集したカヤモノリ(Scytosiphon sp.)の雌性は、エクトカルペンを性フェロモンとして分泌することを発見した。 3.ワタモとカヤモノリ(彦島)からは(-)-(1R,2R)-ホルモジレン(90%e.e.)が、そのエナンチオマーである(+)-(1S,2S)-ホルモジレン(66%e.e.)がマツモの配偶子から分泌されるという興味ある結果が得られた。 4.ワタモ、カヤモノリおよびマツモの雌性配偶子は、遊泳中には性フェロモンを殆ど分泌せず、位置が固定される着床時に分泌し、効率よく雄性配偶子を誘引する、性フェロモンの産生・分泌の様式を解明した。
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