【目的】魚の漁具に対する反応行動感覚研究では感覚器の遊泳時の機能が問題になる。魚の遊泳によって体表に生ずる水流は、側線系管器の機械的刺激受容の大きな雑音にあるはずであるが、この点を考慮した感覚・行動研究はなかった。本研究では、側線系管器の機能が、ある遊泳速度と加速度において感度低下ばかりでなく、機能休止することとその神経機構を明らかにして、高速遊泳時の魚類の機械感覚と行動の関係の理解を深めることを目的とする。 【方法】魚は回流水槽で直線遊泳させた。高速遊泳する魚の側線系管器神経の応答記録は前例がないので、その方法確立のために、頭部管器神経である第VII神経の分枝および体側管器神経である第X神経の分枝神経応答を次の方法で記録した。1)頭頂部から挿入した2本の電極を鰓蓋基部で第X神経分枝に結合させた。2)第VII神経束の記録のために頭頂部から挿入した2本の電極を眼球裏側で神経分枝に結合させるか、3)眼球摘出して上の方法と同様に電極を結合した後に結合部を流動パラフィンで充填した。 【結果】1)の方法によって、魚の遊泳時に第X神経の機能が継続的に停止することを示す記録が得られた。2)の方法による第VII神経の記録から、この神経の機能が第X神経の機能と異ることが示唆された。3)の方法の方がartifactが少ないので、現在この方法で追試を行っている。 遠心系神経による抑止効果をみるために、遠心系繊維と求心系繊維を明瞭に区別した単繊維からの応答記録も準備している。得られる結果から遊泳中の行動(成群、漁具への反応)における管器の関与が明らかになる。
|