研究概要 |
1.Skeletonema costatum産生自己増殖阻害物質の除去 S.costatumの培養液中に粒状活性炭,アンバーライトXAD-2,強塩基性イオン交換樹脂および硫化ナトリウムを添加すると,いずれも対照区より最大細胞密度を若干高めた。なかでも活性炭添加区では最大細胞密度を2〜3倍高め,その密度を5日間以上持続した。しかし,培養16日後には一部の角張った異常細胞が現われた。また,最大細胞密度に達する前に,毎日1回,培養の約1/3を採り出し,同量の倍地を加えて希釈すれば翌日にはほぼ元の細胞密度に達し,全細胞は正常な形態を維指した。したがって,珪藻培養槽の約1/3を採り仔稚魚介類の餌料源とし,同量の培地またはろ過海水を培養槽に加えて希釈すれば安定した培養ができるものと考えられる。 2.他種珪藻が産生する自己阻害物質の検出と同定 自己増殖阻害物質によってChaetoceros costatus,Ditylum bright-welliiおよびAsterionella japonicaはその増殖を阻害された。したがって,この3種の培養液から自己阻害物質の検出と同定を試みた。この結果,A.japonicaが最も強く自己阻害したが,その阻害度はS.cos-tatumの約1/2に相当した。D.brightwelliiは弱い自己阻害作用を示したが,この培養液中の塩基性物質も阻害作用を示したことは興味深い。C.costatusは全く阻害作用を示さなかった。A.japonicaおよびD.brightwelliiの自己阻害物質と15-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-HEPE)標品またはS.costatum産生自己増殖阻害物質とのHPLCから両者の自己阻害物質も15-HEPEであると同定された。S.costatumの本阻害物質の産生量を1とすれば,A.japonicaとD.brightwelliiのそれはそれぞれ約1と1/7と見積られた。
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