研究概要 |
本研究では中山間地の農地および農業用施設における侵食災害の実態を踏まえて,土壌間隙閉塞の時間依存性が斜面崩壊に及ぼす影響について考察した。更に土壌中の内部侵食や土壌透水性に関する実験結果に基づいて,斜面保護対策を検討した。 被災現地の調査結果から,中山間地における圃場整備の農地保全効果を評価できた。これは主に圃場整備によって水田畦畔の斜面勾配が減少して,落水口が拡大されたためと判断した。また不均質化の進んだ土壌を畦畔造成で撹乱して締固めることによって,降雨時における土壌中の水圧や飽和度が上昇しにくい土壌構造となったためとも考えられる。未整備水田の畦畔斜面における土壌透水性は斜面肩から斜面先に向かって著しく低下しており,降雨時に土壌中における水圧や飽和度の上昇と粘着力の低下が生じて,斜面の安定性が低下すると考察した。圃場整備水田の畦畔斜面においても,浸透に伴って土壌構造が経時的に変化すると予測できる。 土壌中の内部侵食および土壌透水性に関する実験から,土壌懸濁粒子を含んだ浸透水は懸濁濃度の上昇に伴いビンガム流動を示すと判断した。ビンガム流体には速度勾配を生じないで滑る栓流が存在し,その栓流半径が間隙半径を上回る場合に瞬時閉塞が生じることがわかった。 土壌構造の不均質化が進んだ斜面の保護対策を検討した結果,有孔管暗渠の埋設が土壌中の水圧や飽和度の上昇を防ぐと判断した。流れ方向に従って通水孔半径を拡大させると,土壌懸濁液による瞬時閉塞を防止できることがわかった。
|