研究概要 |
本研究計画の結果は以下のようにまとめられる。 1.蛋白質の精製。PAGEでプロラクチンと挙動を一にする36K蛋白質の精製法を種々検討し、次のような方法を採用した。まず、調整用PAGEでラット下垂体抽出物を永気泳動し、目的蛋白質バントを切り出し蛋白質を抽出した。この蛋白質を逆相高速液体クロマトグラフィ-で分離し、36K蛋白質に相当する分画を繰り返し分取した。この段階までに約5,000個の下垂体を用いた。2.36K蛋白質の構造解析。分取した36K蛋白質は、アミノ酸組成分析、その結果を元にしたジンエンドペプチダ-ゼによる消化の後に、断片化ペプチドのアミノ酸配列を決定した。解析した3つのペプチド断片の41アミノ酸残基の全てが、既に報告されているリポコルチンV(LCV)の配列に一致した。この結果とLCVの分子量35,744から、精製された36K蛋白質はLCVであると結論した。3.LCVのラット下垂体での生合成について。LCVmRNAから合成した2本鎖DNAのセンス及びアンチセンスの3'末端27塩基に相補的なプライマ-を合成し、下垂体前葉から抽出したmRNAを用いてPCR法を行った。PCR法によってLCV遺伝子に相当するDNAが増幅され、下垂体においてLCVの合成されていることが明かとなった。 本研究計画によって得られた成果は以上の如くであって、下垂体においてプロラクチンに結合能を持つことが示唆される蛋白質が、未だその生理機能の不明確なLCVであることが明かとなった。LCVの精製法は確立したが、材料を大量に必要とする事から、現在PCR法で増幅した遺伝子を挿入した組み換え体による蛋白質発現系を用いて、LCVの合成を行うべく実験を継続中である。
|