研究概要 |
グリシン開裂炎の構成酵素の1つであるH蛋白をコ-ドするcDNAをヒトcDNAライブラリ-から既に得ている。このcDNAをEcoRIで消化すると,5´側800塩基長と3´測300塩基長の断片が得られ,これらをそれぞれ24Lと24Sと名づけた。ヒトの本酵素活性の欠失により非ケト-シス型高グリシン血症が起るが,この疾患の患者ゲノムDNA中では,両プロ-ブ(24Lと24S)による5.5kb SacI断片で9例中6例で欠けていた。 一方,この断片が欠ける患者ゲノムでは,24Lプロ-ブで5.2kbEcoRI断片の欠失を検出できるが,24Sでは特定の断片の欠失や長さの変化を見出せないことは既に報告してある。しかし,24Sをプロ-ブとしたサザ-ン解析の結果を詳細に調べたところ,1.9kbと1.7kbのEcoRI断片のシグナル強度比は,正常人では約2であったが,本疾患々者では約1であった。この事実は,正常人では異なる2つの1.9kb断片が24Sで検出されるが,患者ゲノムではその中の一方が失なわれていることを示す。 ヒトゲノムライブラリ-を24Sと24Lでスクリ-ニングして得られたクロ-ンの中のλHHG102とλHHG9は真のHー蛋白遺伝子をコ-ドしていた。しかし,この断片の制限酵素認識部位の分布から,他のいくつかのクロ-ンの中から,1.9kbEcoRI断片を生じるものは多く見出されたが,λHHG5とλHHG206からの断片のみが24Sとハイブリダイズした。また,この1.9kb断片中のλbaIサイトの分布の違いから,λHHG5が患者で欠失する領域を含むと判断された。 λHHG5に含まれるゲノム領域をプロ-ブとしたサザ-ン解析で,正常人と患者ゲノムから異なる長さの断片が検出されたので,患者ではある程度の長さの欠落部位があると推定された。
|