研究概要 |
我々は先にBa1b/cメスのマウスの口唇にherpes simplex virus-1型(HSV-1)F株を接種し高力価抗HSVウサギ血清を用いて受動免疫を施こして三叉神経節(Trigeminal Ganalia-JG)内限局性HSV潜伏感染モデルに対してToxic lectinの一種RicinをHSV接種と同部位の口唇皮下に注入することによって経軸索的に潜伏感染ニューロンを破壊してHSV潜伏感染を除去することに成功し報告した(J,Inf,Dis,157,1270,1988)。しかしRicinは極めて毒性が強くヒトへの臨床応用は不可能であることから他剤による潜伏感染除去が計画された。まず第一に蛋白合成阻害剤ですでに臨床的に抗悪性腫瘍剤として用いられているAdriamycin (ADM)を用いた。結果は以下の如くであった。1)ADM10mg/mlを単純に皮下に注入した丈では潜伏感染は除去されなかった。2)あらかじめ高張食塩水(10%Nacl)を注入し6-24時間後に同濃度のADNを高張食塩水に懸濁して注入した場合50-100%除去することに成功した、これは高張食塩水を注入することによって皮下に密に分布するskin Langerhans細胞を減少させるためADMが容易に三叉神経末端に取り込まれ、軸索流に乗ったためと考えられた。次に我々はDNAseRNAseおよびこれらの混合物、ATDaseについても検討したがいずれも除去は認められなかった。潜伏感染除去の検証法はTGとVero細胞との共生培養によるCy to pathetic Effect(CPE)出現の有無によって判定されたが、HSVDNA増巾法(polymerase chain reaction-PCR法)では除去操作をしないTGホモジネート上清中でも検出されず本研究には不適であった。尚、本成果の臨床応用に関しては高張食塩水注入およびこれに懸濁したADM注入による催炎とその後に続く皮膚の欠落のため身体の非露出部(陰部等)の頻回のヘルペス皮疹の出現する症例に応用可能と考えられた。
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