研究概要 |
【目的】肝細胞癌の特徴は,腫瘍血管新生の非常に強い点にある.われわれは,血管新生抑制物質(TNP-470,武田薬品より供与)がこの血管新生を抑えることにより肝細胞癌の発育を阻止し,治療効果をもたらす可能性があるのではないかと考え,ウッドチャック肝癌の系を用いて検討した. 【方法】TNO-470のin vivoの効果を検討するためにウッドチャック肝癌に対して以下の方法で投与した.(1)局所投与として肝左葉,肝右葉に別々に生じた約30mmと腫瘍径のそろった肝癌に対して,エコーガイド下にそれぞれTNP-470 20mgとその基材のみの局注を繰り返し、肝癌の発育を比較検討した.(2)全身投与として肝右葉に10mmの肝癌が生じたウッドチャックに対して,TNP-470 30mgの筋注を16週間繰り返し,腫瘍径を追跡した.(3)選択的肝動脈投与として肝左葉,肝右葉にそれぞれ肝癌が生じたウッドチャックを用い,股動脈よりカテーテルを挿入し,肝動脈造影を行なった後,油性TNP-470 20mgの投与を行った。 【成績】(1)約12週間の経過観察では,治療した左葉の癌の発育は抑制され30mmのままであった.コントロールの右葉の癌は徐々に増大し53mm×30mmとなった.組織学的にも治療した癌の血管新生は軽度であった.(2)全身投与を継続した16週間は腫瘍径は10mmのままであった.しかし,投与終了後は,急速な増大を示した.(3)3週間後,施工した血管造影像では,両葉の癌において縮小傾向が認められた. 【結論】以上の結果より,血管新生抑制剤(TNP-470)は,肝癌の新しい治療剤の一つになりうると考えられた.
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