研究概要 |
ヒトの肝細胞癌(HCC)のDNAを数種類の制限酵素で切断し,cーmycの5'側8q24の部位のクロ-ン380 8A1.8をプロ-ブにサザン解析すると,一方のアレルにDNA再構成を示唆する変化を示す例がある。この変化について検討を行った。 1)この変化を示すHCC患者の癌,非癌組織,末梢白血球のDNAをサザン法で検討したところ,全例,3者とも同一パタ-ンを示した。また,変化を示した患者の家系調査を末梢白血球DNAを用い行い,coーdominant segregationを示した。以上より,クロ-ン380 8A1.8を用いたサザン法による変化は右記のpoly morphismであり今回発見したものはアレル2であった。 2)次にHCC患者において,アレル2をもつ頻度についてHBsAgの有無にわけて検討した。HBsAg(+)HCC患者は,20例中6例(30%)にみられ,HBsAg(-)では40例中3例(7.5%)にみられ,HBsAg(+)HCC患に多く,HBsAg(+)の発癌にアレル2の関与している可能性が示唆された。 3)アレル2をもつことが,癌細胞の特徴とより強く関与していないかみるため,アレル2をもつ肝癌株HuH6ともたない肝癌株HuH7,JHH2,JHH4,PLC/PRF/5のcーmycの発現をノザン法で比較したところ,HuH6は他の細胞より多くの発現を示していた。 4)そこで,HuH6のgenomic Iibraryを作成し,アレル1,2をクロ-ニングし構造解析した。その結果,アレル1のクロ-ン380 8A1.8の5'側に約3KbのDNA断片が挿入されているものがアレル2であった。 現在,cーmycの発現と挿入DNA断片との関係について検討中である。
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