研究概要 |
多系統萎縮症MSA(multiple system atrophy)は孤発性のOPCA(olivoーpontoーcerebellar atrophy),線条体黒質変性症,ShyーDrager症候群を総称する疾患概念としてOppenheimerらによって提唱された。最近PappらがMSAに特異的な病理所見としてglial cytoplasmic inclusion(GCI)を報告した。GCIは主に白質のグリアの細胞質に出現する線維状構造物である。GCIは免疫組織化学的にはユビキチンとチュ-ブリンの抗体で染まるとされている。本年度われわれは1)GCIがMSA特異的であることを他の家族性脊髄小脳変性症と比較して検討した。その結果ユビキチン陽性反応は他の疾患にも出現するが、GCIは特異的であることがわかった。2)従来報告されていたGCIがチュ-ブリン陽性、MAP5陽性になることは確認されたが銀染色陽性GCI,ユビキチン陽性GCIの数に比較すると少なかったため、また購入した抗体の種類によって染色性が見られないこともあるため、これらの蛋白が実際GCIの構成成分である可能性には疑問があると考えた。3)MSA患者の剖検脳よりGCIの部分精製を試み、GCIの免疫組織化学的に組織切片上と同様の結果が得られるかどうかを調べた。部分精製方法としては界面活性剤を用いた方法を検討した。界面活性剤のTritonにGCIが不溶性であることがわかり、この不溶性分面から蔗糖密度勾配を用いて部分精製した。この分画のGCIはユビキチン陽性ではあった。他の細胞骨格については明確な結論は出ていない。4)この分画を用いてGCIに対するモノクロ-ン抗体の作成を試みているが現在のところ特異的抗体の作成には成功していない。
|