研究概要 |
経食道条音波断層法(既存の断層装置に今回の補助金にて購入した経食道超音波探触子を使用し,以下の研究実績をえたので報告する。 家族性高コレステロ-ル血症(TH)患者21例(全例hetero),51±10歳,と60歳以下で高血圧,高脂血症,虚血性心疾患を合併しない健常者21例,47+8歳,を対象として胸部大動脈粥状硬化病変の形態学的診断と生理学的血管特性の評価を行なった。胸部下行大動脈を,門歯より25cmのレベルから横隔膜レベルまでの間で4分割し,その内膜面の粥状硬化病変の程度を2断面超音波断層像を視覚的に4段階にスコアリング(ASー0点:正常,1点:内膜肥厚,2点:アテロ-ム形成,3点:石灰化形成)した。前述の各4つの部位の最っとも病変の高度な断面像を記録し,その断面での硬化病変の占める中心角を求め硬化病変をスコア-との積より、Total Atherosclerotic Score(TAS)を算出した。また,硬化病変の軽度な部位の大動脈径の心周期での径変化をMモ-ド法で記録し、カフ法で求めた体血圧とから、大動脈麹化指数βを算出した。FH患者8例では,プラバスタチン20mg/日およびプロブコ-ル1000mg/日を平均1、2年間投与し,同様の検査を再度施行した。結果:(1)FH群では治療前のTAS値は3.7±1.3で健常群より有意に低値であった。また,治療前TAS値と総コレステロ-ル値,およびTAS値と年齢の間には有意な正相関がみられた。(2)FH群と健常群では、下行大動脈最小径には差はみられなかったが,心周期における径変化量はFH群(1.1±0.4mm),健常群(1.7±0.3mm)でFH群で有意に低下していた。(3)FH群のβ値(10.0±4.9)は健常群(5.1±1.2)に比し有意に低値を呈し、明らかな生理学的動脈硬化が示された。(4)約1、2年間の血清コレステロ-ル低下薬の投与により,TAS値,β値は有意に低下し形態学的にも血管特性の面からも大動脈硬化病変の退縮が認められた。
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