研究概要 |
細胞外マトリックス蛋白は細胞構築に重要であり,又最近は細胞内の情報伝達においても重要な働きを担っているとされている。しかし,種々の病態において,この細胞外マトリックス成分がどのように変化しその病態の維持に対応しているのか不明である。本研究は心筋症発症ハムスターであるBio14,6およびBio53,58を用いて,その心筋障害の発症過程において心筋線維化に重要な物質であるコラーゲン,フィブロネクチンなどの分子生物学的検討を行なった。同時に免疫組識学的手法を用いて形態的変化についても併せて検討した。その結果,(1)心一体重比はBio14,6が対照であるFIBに比し生后5週齢より有意に増加を示した。しかし,Bio53,58は生后週齢を除きFIBのそれを有意な差を認めなかっため。(2)心筋コラーゲン含有量は両心筋症モデル共に生后20週齢より増加を示した。この増加は週齢の増加に正比例した。(3)コラーゲン蛋白の遺伝子および蛋白発現について検討した。I型コラーゲンは心筋症の進展に対し変化を示さなかったのに比し,III型コラーゲンは両モデル共に20週齢より増加を示した。しかし,不全期である生后40週齢ではBio53,58の方がBio14,6に比べてその発現量は強かった。また,この変化は蛋白の発現においても同様の結果を示した。(4)フィブロネクチンおよびラミニンのこの蛋白発現は心筋症の両モデル共に差を認めなかった。(5)アンギオテンシン転換酵素阻害剤であるエナラプリル(10mg/kg)を生后10週齢より20週齢迄経口投与した場合,Bio14,6はコラーゲン含有量遺伝子発現共にFIBのそれらと差を認めなかった。しかしBio53,58は薬剤の投与に対して有効性を認めることができなかった。心筋症の進展にはコラーゲンタイプIIIの異常代謝にはコラーゲンタイプIIIの異常代謝による線維化が強く示唆され,この防御に対してエナラプリルの投与がBio14,6には有効であった。このことからモデル動物の障害機構が異なると推察される。
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