研究概要 |
人の主要組織適合抗原系(HLA)は,先天性副腎皮質過形成など遺伝性疾患と関連することが知られている。そこで我々は,遺伝性ならびに非遺伝性鎖肛,先天性胆道閉鎖症,総胆管拡張症,ヒルシュスプルング病,肥厚性幽門狭窄症,腸回転異常症,先天性食道閉鎖症,小腸閉鎖症などの消化管奇形についてHLA検査を行い,以下の結果を得た。 1.遺伝性のみられた鎖肛8家系(親子発症4家系,同胞発症4家系)では1家系を除いて,鎖肛発症者とHLAハプロタイプ(半数型)に関連性がみられた。 2.遺伝性のみられない鎖肛患者35例では,HLA-A2,CW3の発現頻度が,対照(健常日本人)に比べ有意に高かった(P<0.025)。 3.先天性胆道閉鎖症および総胆管拡張症が家族性に発症した3家系では,発症者はいずれも共通したハプロタイプを有していた。 4.遺伝性のみられない胆道閉鎖症23例および総胆管拡張症7例では,CW3の発生頻度が対照に比べ有意に高かった(P<0.01)。 5.ヒルシュスプルング病では,同胞発症1家系で共通のハプロタイプを認めたが,遺伝性のない27例ではHLAとの関連は認めなかった。 6.肥厚性幽門狭窄症では,A24の発現頻度が16例中13例(81.2%,対照58.7%)と高かったが,統計的有意差はなかった。 鎖肛や胆道奇形でHLAとの関連性がみられたことは,これらの疾患では疾患感受性遺伝子がHLA遺伝子座の近傍に存在することを示唆している。その他の消化管奇形については,症例数が少ないためか統計的有意差が得られず,今後の検討によって結論を得たい。
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