研究概要 |
脳の静脈系は容量血管ともいわれ全脳血流の3分の2余りを有することから,頭外内圧調節にも重要な役割を果していると考えられている。このうちでも血管径100μm以下の脳内微小静脈は容量血管という点から特に重要であるが今までほとんど研究されていなかった。本研究の目的は脳内微小静脈環流法を開発し各種血管作動物質に対する反応を検討することにより脳内微小静脈の頭蓋内圧や脳循環の調節への関与を検討することである。(方法):ラットの脳切片を切出し脳軟膜を剥離すると軟膜静脈と同時に脳内微小静脈(平均径約70μm)を摘出することができる。これを顕微鏡下の我々の作製したガラスピペットにてカニュレーションした。溶液のpHは7.3に保ち血管内圧を5mmHgに設定し温度を37℃へ上昇させると血管径は安定し,ここで血管作動物質を投与しその作用を脳内微小動脈と比較検討した。交感神経作動物質としてノルエピネフリン(NE)の作用をみた。(結果と考察):脳内微小静脈においても脳内微小動脈と同様に容液のpHの変化にたいしてよく反応しpH6.8で11.3%の拡張,pH7.6にて11.9%の収縮を示した。NEは脳の主幹動脈を強く収縮するが脳内微小動脈は無反応である。一方脳内微小静脈の容量依存的に最大26.7±0.9%(M±SE,n=15)の強い収縮を引きおこした。NEによる反応はα-ブロッカー(phentolamine 10^<-4>M)にて抑制され,β-ブロッカー(propranolol 10^<-4>M)では抑制されないことからα-レセプターを介するものと思われた。今回の実験では脳内微小動脈と脳内微小静脈の反応性の違いが示された。
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