研究概要 |
(1).ラット大腿動脈,大腿静脈を切断し,Launtzen原法によるsleeve法で修復を行った。12ラット24大腿動癒を縫合し、術後3日で観察した6動脈中6、1週で観察した6動脈中6、3週で観察した12動脈中11で開存していた(計95.8%)。12ラット23大腿静脈での開存率は73.9%であった。 (2) 中枢縫合部、末梢縫合部ともsleeve法を用いてラット大腿動脈に下腹壁静脈を移植した静脈移植の成績は、術後3週で22移植静脈中17での開存(77.3%)であった。sleeve法では縫合部狭窄が問題となるが、開存していた19移植静脈を術後約3カ月観察し、縫合部狭窄が長期にわたり残存するものであるか検討した。組織標本について狭窄を観察してみると、中枢縫合部、末梢縫合部とも大腿動脈内径の約80%の内径であり、狭窄は残っていた。 (3) 新しい縫合針(loop針)を用いてsleeve法で挿入された血管断端の固定を試みた。2つのloop針を血管壁全層にかけて挿入血管先端を固定する方法では、血管断端のcomplianceが低下するためか、術後3週で20本の大腿動脈中開存は13(65%)であった。2つのloop針を血管外膜のみにかけて挿入血管先端を固定する方法では20大腿動脈中19で開存していた(95%)。loop針を外膜のみにかけたsleeve法で中枢縫合法、末梢縫合部とも修復した静脈移植では、術後1週で観察した3移植静脈中3、3週で観察した18移植静脈中14で開存が確認された(81%)。従来法による静脈移植の開存率(18/20移植静脈)には至らなかったが、loop針を用いたsleeve法を行うことで、血管鉗子の解除は順序を気にせず行うことができた。手術手技がやや複雑になること、sleeve法では従来法よりもひろい術野が必要なことなどが問題として残った。
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