研究概要 |
近年免疫系と神経内分泌との関連が注目されている.本研究はTumor necrosis factor-α(TNF-α)の間脳下垂体卵巣系における関与を明らかにする目的で検討を加え下記のことが明らかとなった。まず視床下部においてTNFはインターロイキン6(IL-6)の産生を高めることが明らかにされ、IL-6がGnRH分泌を促進する報告と考え合わせると、TNFが性周期のフィードバック機構にサイトカインのネットワークを介して関与している可能性が示唆された.しかしIL-6或はTNFは性周期と密接に関わる視床下部ドーパミンには影響を与えないことも明らかにされた.TNFは下垂体のIL-6産生を高めること,ゴナドトロピン分泌においてはその生物活性および免疫活性には影響を与えないこと,またTNFのプロラクチンの分泌刺激には細胞外カルシウムが必要なこと等がわかった.またTNFにより細胞内のカルシウムが上昇を示す細胞は,GnRH,GHRH,TRH,CRH等の視床下部刺激ホルモンのどのホルモンにも反応を示さないホルモン非分泌細胞,follicuro-stellatecell(FS細胞)である可能性が示唆された.さらにFS細胞で産生され,パラクライン因子として作用しているIL-6の分泌調節機構やTNFの下垂体細胞における細胞内情報伝達機構について検討を加え,視床下部で産生されているpituitaryadenylate-cyclaseactivatingpeptide(PACAP)やvasoactive intestinal peptide(VIP)がFS細胞からのIL-6の分泌を促進することを見いだし,下垂体ホルモン分泌を調節しているFS細胞に及ぼす視床下部ホルモンの関与の可能性が示唆された。一方TNFの下垂体細胞における細胞内情報伝達機構について検討の結果、TNFは下垂体細胞でアラキドン酸の遊離を促し、その代謝産物である5-Lipoxygenase代謝産物を介してホルモン分泌を促進することが明らかとなった。
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