研究概要 |
1.ヒト性腺の組織発生を報告した(J.Anatomy,1991,177:85-107)。 ヒト性腺は基本的には原始生殖細胞、中腎由来細胞、間葉細胞、体腔上皮により形成されているが、性腺内上皮は中腎由来であること、中腎由来の原始性索の存在を発見したこと、また、いずれの発生段階においても体腔上皮は性索の構成要素として関与していないことを明らかにした。 2.中腎説を提唱し、卵巣腫瘍の基本分類を報告した(発表予定)。 “中腎説"の基本概念は、ヒト性腺の組織発生に基づいて“卵巣上皮性腫瘍の発生母体は性腺内の中腎由来組織であり、卵巣上皮性腫瘍は中腎系組織を模倣組織とする"とするものである。すなわち、中腎系組織として、1.膀胱、2.遠位中腎管、3.近位中腎管、4.中腎細管、5.明調細胞索、6.中腎糸球体、7.原始性索、8.特殊性索(卵胞細索・精細索)があり、それぞれ、1.移行上皮性腫瘍(Brenner腫瘍など)、2.粘液性腫瘍、3.類内膜腫瘍、4.漿液性腫瘍、5.明細胞腫瘍、6.中腎糸球体腫瘍(Yolk sac tumor,Endodermal sinustumor,polyyesicular vitelline tumorなど)、7.原始性索腫瘍(Sex-cord stromaltumor with annular tubules,germ cell-sex cord-stromal tumor,unclassfiedなど)、8.特殊性索腫瘍(Granulosa cell tumors,Sertoli-Leydig cell tumors)の組織発生とすることを報告した。 3.中腎説は、卵巣上皮性腫瘍に関して、組織発生学的に合理的かつ系統的な解釈を可能にした。その特徴は、1.中腎糸球体腫瘍の存在を予測したこと、2.原始性索腫瘍の存在を提案したこと、3.明細胞腫瘍の組織発生を説明したこと、4.Brenner腫瘍の組織発生を解明し、上皮性間葉性腫瘍に属することを明らかにしたことである。
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