研究概要 |
ウシ耳下腺細胞膜をパパインで可溶化後、陰イオン交換カラムやゲルろ過カラムなどを用いたHPLCにより分離精製したCa^<2+>依存性nucleotidase活性についてsulfhydryl基を持つ還元剤の影響を検討したところ、還元型glutathione(GSH)により最も強く阻害された。阻害効果の強さはGSH(20mM)に続き以下、cysteine,dithiothreitol,2ーmercaptoethanolの順であった。GSHにより阻害された活性は酸化剤の添加により回復した。しかしiodoacetamideでアルキル化した後、酸化剤を添加しても酵素活性の回復は認められなかったことから、本酵素蛋白質はその活性を維持するためにーSーSー結合が必要であることが示唆された。また、本酵素は広い基質特異性を持ち、XTPに関してATP>CTP>ITP>GTP>TTP>UTPの順でそれぞれのnucleotideを加水分解した。XDPに関してはADPのみが弱いながら加水分解された。XMPおよびpーnitrophenylphosphateは全く加水分解されなかった。一方、ウシ耳下腺から純度の高い細胞膜画分を調製しReschらの方法によりCon A Sepharase Columnを用い、rightsideーoutーvesicleとinsideーoutーvesicleを分離しそれぞれのfractionにおけるCa^<2+>依存性nucleotidase活性を測定したところ、大部分の活性がrightsideーoutーvesicle fractionに回収され、insideーoutーvesicle fractionに本酵素活性は認められなかった。このことから、このCa^<2+>依存性nucleotidaseはその活性部位が細胞膜の外側に向いているectoーenzymeであることが示唆された。また、Niggliらの方法により、精製酵素とasolectinを用いてproteoliposomeの作製を試みCa^<2+>輸送能を検討したところ、本酵素はCa^<2+>輸送に関与しないことが判明した。以上のことから、本酵素は細胞膜の外側に位置し、細胞膜上でのnucleotideの濃度を調節していると考えられ、その調節機構、生理的意義などについてさらに詳細な検討が必要である。
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