研究概要 |
局所麻酔薬としてリドカインを選び,軟膏剤を調製し,リドカインの局所皮膚麻酔効果をヒトで,リドカインの経皮吸収をラットで検討した。リドカイン軟膏の最適処方は,リドカインを10%,基剤としてポリアクリル酸(Hiviswako 104)を1%,添加剤としてプロピレングリコールを10%,エタノールを30%及び精製水を適量加えたpH7.4の水性ゲル軟膏であった。また,皮膚麻酔効果発現時間を予め研究の主旨を説明し同意を得た健康成人ボランティア及び手術予定患者で試験した。この結果,グリチルレチン酸誘導体の1つであるグリチルレチン酸3-0-モノヘミフタレート2Na(GA MHPh)を3%添加することで塗布30〜60分にかけて,リドカイン単独に比べてペインスコアが有意に低くなった。従って,麻酔効果発現時間はGA MHPhの添加によって短縮されることが認められた。この効果の機構を解明する手始めに,リドカインのラット皮膚中濃度及びヒト皮膚血流量を測定した。この実験では,経皮吸収促進剤の1-メントール及びd-リモネンについても検討した。この結果,1-メントールやd-リモネン添加群は血中濃度や皮膚中濃度は高めるが皮膚麻酔効果はほとんどなかった。一方,GA MHPh添加群では血中濃度や皮膚中濃度にほとんど影響を及ぼさないが,血流量を著しく低下させた。これらの結果が何を意味するかは不明であり,今後さらに検討する必要がある。
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