研究概要 |
我々は,五葉松松かさ由来リグニン様物質がherpes simplex virus,influenzaVirusの培養細胞でのプラーク形成,rofavirus,enterovirusによる細胞変性,及びhuman immunadeficiency Virus(HIV)の細胞感染を抑制することを報告してきた。類似の活性は,他の木質化リグニンでも確認されたが,これらは多糖を含む不均一なphenylpropenoid重合構造をとるため活性成分の帰属が困難であった。リグニンの抗ウイルス活性は,H_2So_4処理により多糖部分を分解しても影響を受けなかったが,NaClO_2処理によりポリフェノール部分を分解すると完全に消失した。ポリフェノール部分の重要性を確かめるために,川添豊教授(名市大)との共同研究により,p-coumaricacidやcaffeic acid horseradish peroxidaseとH_2O_2の存在下で脱水素重合し水溶性合成リグニン(分子量1〜5万)を調製し,抗ウイルス活性を比較検討した。合成リグニンの抗HIV活性は,天然リグニン,phenylpropenoidmonomer,タンニン関連化合物よりも強かった(CC_<50>/EC_<50>=100)。 ^<125>Iで標識した合成リグニンは,influenza virusと瞬時に結合することが庶糖密度勾配遠心により確められた。合成リグニンは,HIVの細胞への結合を硫酸化多糖程ではないが有意に抑制した。合成リグニンは,myeloperoxidase(MPO)依存性のヨード化( ^<125>Iの細胞酸不溶性画分へのとり込み)を特異的に促進するので,合成リグニンによる抗HIV効果が細胞内MPO含量に依存するかを検討した。合成リグニンの抗HIV活性は,MPO含量の高いHL-60細胞でも,MPO含量の低いU-937細胞でも同程度に発現されたので,MPO介在性に産生されるHOClの関与は低いと思われた。合成リグニンはO^-_2やHOClをスカベンジする作用が見い出されたので,これら活性酸素によるウイルス発現を抑える可能性がある。又,合成リグニンはヒト未梢血由来単核球による種々のサイトカイン(IL-1α,IL-1β,TNF)の産生を促進するので,anti-HIV cytokineの産生についても検討中である。
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