本研究では、当初高機能パソコンへの小型数式処理システム(SYNC)やエキスパ-トメニュ-により数値アルゴリズムの選択をする常微分方程式の数値解法システム(PLOD)の移値とその上で稼働する新しい数式・数値融合アルゴリズムの開発を意図した。移植に関してはそれなりの稼働が可能になっている。しかし、特にPLODで必要となるグラフィックス部分は現状ではパソコン間の規格の相違のため十分には稼働していない。このため、本研究を補完する意味で平成4年度にも新しい科学研究費の申請をしている。この一方、従来とは異なったグラフィックス手法の確立を目指して独目の研究も進めている。 次に数式・数値アルゴリズムであるが、この面では大きく進歩を生んだ。前年度から継続していたハイブリッド積分の研究をさらに進めた。数値計算のみや数式処理のみでは結果を得ることが可能だったいくつかの有理関数の積分に対して、ハイブリッド積分は有効で計算可能であることを示した(JCAM発表論文参照)。ハイブリッド積分を上記小型数式処理システムに組み込むことに成功している。さらにこの手法を離散デ-タ列や複雑な関数の積分を得るために拡張することを考えた。この研究過程では、ハイブリッド計算に基づく新しい有理関数近似の方法を提案し、古くから未解決であった有理関数近似での「退化」(近似関数の分子分母の多項式が浮動小数計算の意味で共通因子を持つ)の問題をハイブリッド計算で解決し得ることを示した。この研究は現在進行中であるが、常微分方程式の解法と関連付けることによって上記PLODのような数値計算にのみ頼った解法をより進展することも可能となる。この研究の成果は部分的に研究会などで報告しているが、この過程で本年度受けた科学研究費は非常に有効であった。
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