研究概要 |
超好熱古細菌は水の沸点である100゚Cでも良好に生育し、その生体機能成分である酵素は通常の生物のものよりかなり高い耐熱性を持ち、耐熱性酵素の分子設計の解明に良好な材料となりうることが期待できる。また、古細菌という生物進化面からも注目される生物である。本研究では超好熱古細菌を対象として種々の脱水素酵素の検索を行った結果、グルタミン酸脱水素酵素の高い活性を超好熱古細菌Pyococcus furiosus,Pyrococcus woesei,Themococcus litoralis,Themococcus cellerなどに見だした。これら3種の超好熱古細菌から本酵素を精製することに成功し、これら酵素の分子量、サブユニット構造、基質特異性、補酵素特異性、酵素反応のpHや温度依存性、耐熱性、耐塩性などの酵素化学的特徴の詳細を明らかにした。その中で、本酵素の耐熱性は極めて高く、P.furiosusとP.woeseiの酵素では、10分間の処理では105゚Cでも熱失活せず、これまでに知られているアミノ酸脱水素酵素のなかで最も耐熱性が高い脱水素酵素であることを明らかにした。T.litoralisの酵素はPyrococcus属細菌の酵素よりも耐熱性は若干低いが、90゚Cまでの熱処理で熱変性せず、常温菌や中等度好熱菌由来の酵素と比較してかなり高い耐熱性を示した。T.litoralisの酵素は補酵素としてNADPに高い特異性を示し、NADPの他にもNADも補酵素とするPyrococcus属細菌の酵素とこの点で異なっていた。N-末端の20アミノ酸残基の配列は3種の超好熱古細菌の酵素で高い相同性が認められたが他の生物のものとは大きく異なり、超好熱古細菌の特徴が認められた。これらの嫌気性超好熱菌の培養法の改良を行い、従来より約50倍生産能を上げることに成功した。さらに、これらの酵素の構造と機能の相関を明らかにするために遺伝子の大腸菌でのクローニングを種々検討したが良好な酵素生産能をもつクローン株を見出すには、現在のところ至っていない。
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