研究概要 |
細胞は生きてゆくために,あるいは多細胞からなる組織・器官を形成しそれが機能してゆくために,外界との物質や情報の交換を行なう。細胞はその目的のためにいろいろなタイプの装置を持っているが,イオンチャンネルもその1つである。我々は,早くからシビレエイ電紀器官に存在する電位依存性CIチャンネル蛋白分子に注目して研究を行なってきた。本研究においては,生化学的手法,電気生理学的手法,遺伝子工学的手法を駆使し,構造機能連関を解明することを目的とした。 我々は特異的阻害剤の結合あら180Kタンパク質がCIチャンネル分子であると推定していたが,それを抗体を用いて確認した。180Kタンパク質を電気泳動ゲルから精製し,それを抗原としてウサギでポリクローナル抗体を作成した。この抗体はイムノブロットで180Kタンパク質しか認識せず,さらに興味深いことに,脂質平面膜で観測されているCI電流をcis側から阻害し,trans側から活性化した。どちらの場合にも単一チャンネルコングクタンスは変えずに,開確率を変化させた。この結果は,180Kタンパク質がCIチャンネル本体であり,膜貫通型のタンパク質であることを示している。 さらに,電気器官と発生学的に近縁な骨格筋の膜分画のうち,T管由来の膜分画について調べたところ,回様なチャンネル活性の阻害がこの抗体により引きおこされることが明らかになった。さらにイムノブロットの解析から,この抗体は90Kと60Kのタンパク質を認識し,これらは非還元条件下では,ジスルフィド結合で結ばれていることがわかった。 今後は,この抗体を用いて,CIチャンネルをコードするCDNAを得,これをもとに蛋白質の構造を明らかにしてゆく予定である。
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