研究概要 |
本研究では,複数の多階層意思決定システムのネットワーク結合により,システムの局所的失敗を吸収し,失敗からの情報を利用して自己改善する自律分散型ネットワークシステムの耐故障性を明らかにした. (1)初めに,故障回避型の従来の信頼性理論の枠組みを超えた.故障制御の立場から耐故障性(フォールトトレラント)を考察するための数理モデルを提案,信頼度を解析した.フォールトトレラントシステムにおける信頼度を少ないデータで評価する有効な手段を与えた. (2)次に,多階層意思決定組織内のメタ階層レベルの機能による自律的改善メカニズムを明確にした.二重評価構造をシステムモデルに導入することにより,自己改善による情報生成が人間の認識・予測限界に由来する不確実性を減少させるメカニズムを明らかにした.また進化する予見システムの成分条件も明らかにした. (3)同時に,並列遺伝的アルゴリズム,免疫ネットワークの自律性,自己認識/学習機構からその情報特性を抽出することにより,それらネットワークモデルに基づく自律分散システムの設計可能性を明かにした.さらに遺伝的アルゴリズムを利用した分散ネットワーク型の協調的制御方法を提案した. (4)また背後にある情報システム,特にデータベース(DB)にも着目し,統合化されたDBとインテリジェントな分散処理が望ましいことを示した後,リフレクションの採用に依って修正の容易なデータモデルも提案した. 最後に以上の結果を総合し,トラブルの内部吸収と自己改善によるネットワーク間での吸収がどちらも意思決定システム内のメタ機構で実現されること,特に後者に関しては大域的失敗の発生可能性をリアルタイムに監視し,逐次的に予測,内部評価システムなどを予防的に改善することで耐故障性が保証されることを示した.
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