研究概要 |
平成3年度は,観光開発と過疎地域振興の関連性についてシステム論的整理を試みた。その上で,(1)個別経営生体の短期的経営成立性に関する分析,ならびに(2)長期的経営成立性に関する分析,の二方面から基礎的なモデル分析を試みた。 平成4年度は,前年度の成果をふまえるとともに,ミクロな経営行動分析に加えて,よりマクロな観点から過疎地における観光地経営の可能性を分析した。その結果,次にような知見を得た。(1)過疎地域の活性化のメカニズムを,糧(かて)→舵(かじ)→絆(きずな)→礎(いしずえ)の各機能の連関メカニズムとして捉えることが有効である。(2)糧のみならず,舵(リーダシップ)や絆(地域連帯)にも寄与しうるような観光開発の戦略をシナリオとして作成した。(3)観光開発が地域経済,財政に及ぼす影響について分析モデルを開発し実証分析を行った。対象地域としては鳥取県・島根県の過疎町村を取り上げた。 これらの研究の遂行により,過疎地域の特殊性をふまえた観光開発の可能性と,それを科学的に分析し,有効な施策を検討するための方法論を提示し得た。その成果は大別して次の2つになる。(I)観光開発を過疎地の地域振興の手段とみなし,社会システムとしての地域の活性化と関連づけて観光開発を検討するためのシステム,モデルが提示された。(II)主として地域経営の視点から観光開発の戦略を検討する場合の経営分析モデルを開発した。 これらの成果は,今後,他の過疎地域の活性化を観光を機軸として科学的に検討する上で有効な方法論として活用できるものと考える。
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