研究概要 |
我々は活性持続型ビタミンC(Asc2ーP)がヒトI型コラ-ゲンを構成するα_1(I)鎖およびα_2(I)鎖遺伝子の転写を活性性化することを明らかにした。本年度はこの転写活性化機構の解析を行った。 1.Asc2ーPによる転写活性化過程を明らかにするために,ヒト皮膚線維芽細胞をAsc2ーPで8時間から6日間処理し,α_1(I),α_2(I)鎖の合成量,mRNA量,核転写活性を調べた。Asc2ーP処理6日後にα_1(I),α_2(I)鎖の合成は6倍に上昇した。一方、それぞれに対するmRNA量は処理3日後に最大となり,未処理の3倍の値を示した。核の転写活性は処理8時間後に2倍,40時間後に3倍となり,以後一定となった。また,Asc2ーPと同時にシクロヘキシイミドを添加し,細胞の蛋白質合成を90%以上阻害してもAsc2ーPによるI型コラ-ゲン遺伝子の転写活性化は阻害されなかった。これらの結果はAsc2ーPは蛋白質の合成を介さずにI型コラ-ゲンを構成するα_1(I)鎖およびα_2(I)鎖遺伝子の転写を同時に活性化することが明らかになった。また,mRNAの翻訳の活性化機構の存在も示唆された。 2.エ-ラ-ダンロス症(EDS)患者細胞におけるα_2(I)鎖遺伝子の転写の阻害。我々は先にEDS患者細胞でα_2(I)鎖が検出されないことを報告した。この細胞をAsc2ーPで処理すると,α_1(I)鎖遺伝子の転写は正常細胞と同様に活性化されたが,α_2(I)鎖遺伝子ではAsc2ーPによる活性化は全く起らなかった。このことから,EDS患者細胞のα_2(I)鎖遺伝子ではAsc2ーPに応答するcisーacting elementsに異常があると考えられる。現在この患者細胞のα_2(I)鎖遺伝子のプロモ-タ-領域とエンハンサ-領域と考えられる第1イントロンの部分をPCR法で増幅し,クロ-ニング中である。この部分の塩基配列の決定により,Asc2ーPに応答する配列が明らかになると考えられる。
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