研究概要 |
1.フューリンのCOS細胞での発現フューリンは酵母のKeX2プロテアーゼと高いホモロジーを示すことから,前駆体蛋白質の限定加水分解に係ることが推測されていた。本研究において,フューリンのcDNAと血漿アルブミンあるいは補体第3成分(C3)のcDNAを同時にCOS細胞にトランスフェクトしたところ,アルブミンとC3の前駆体(プロアルブミン,プロC3)からそれぞれの成熟型への変換を顕著に促進した。さらに,精製したフューリンを用いたインビトロの系において,フューリンがプロアルブミンとプロC3を変換する能力を有することを証明できた。これらの事実は,フューリングが発現された細胞内で直接に前駆体蛋白質の変換に係っていることを強く支持するものである。 2.血漿蛋白質前駆体のプロセシングにはカルシウム依存性のプロテアーゼが関与している。初代培養肝細胞あるいはHEPG2細胞をカルシウムイオンが枯渇する条件下で培養し,分泌されてくる血漿蛋白質の解析を行ったところ,成熟蛋白質の分泌は全く認められず,替りに前駆体(プロアルブミン.プロC3)が培地中の分泌されることが判明した。さらに,補体第4成分(C4)の分泌においても,前駆体(プロC4)のみがカルシウムイオンの枯渇の条件下に分泌されて来ることが確認され,カルシウム依存性のプロテアーゼが各前駆体のプロセシングに関与していることが示唆された。 以上のことは,カルシウム依存性のプロテアーゼであるフューリンが,肝細胞のプロセシングプロテアーゼである可能性を示すものであるが最終結論を得るにはさらにくわしい検討が必要となる。
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