研究概要 |
(1)AJにおけるアクチンフィラメントと細胞膜の結合にかかわる分子群の解析を行った。我々が単離AJからbarbed end capping proteinとして同定した裏打ち蛋白質ラディキシンが、赤血球の主要裏打ち蛋白質であるバンド4.1のファミリーに属することが、cDNA解析から明らかになった。このことは、ラディキシンがアクチンフィラメントのbarbed endを直接細胞膜蛋白質に結合させていることを強く示唆する。そこで、さらに、免疫沈降法とモノクローナル抗体法を駆使して、ラディキシン結合膜蛋白質の同定およびそのcDNAの単離を試みつつある。 (2)AJにおけるチロシン燐酸化の解析を行った。我々は、すでに、AJには3種類のチロシンキナーゼ(c-yes,c-src,lynキナーゼ)が濃縮していることを見出していた。一般にsrcファミリーに属するキナーゼは膜内蛋白質に結合することが示されつつあるので、AJにおいてもこれら3種類のキ-ナーゼは特殊な膜内蛋白質に結合している可能性が高い。そして、この膜内蛋白質こそが接着情報のレセプターであると想像される。そこでやはり、免疫沈降法とモノクローナル抗体法を用いて、yesキナーゼと結合する膜内蛋白質の同定を試みた。現在、有力な候補が見つかりつつあるが、決定的な証拠を得るに至っていない。 以上の結果により、AJという細胞接着装置の分子構築と情報伝達機構に関する我々の理解は、かなり深まったものと考えられる。
|