研究概要 |
充填スクッテルダイト化合物RT_4X_<12>(R=希土類,T-Fe,Ru,Os,X=P,As,Sb)は,R,T,X原子の組み合わせ方により,非磁性半導体・金属,金属-非金属転移,強磁性・反強磁性,超伝導,価数揺動,重い電子異常,四重極秩序,四重極近藤効果,近藤半導体,非通常型超伝導,非フェルミ液体的金属等々,極めて多彩な物性を示すことから,最近大変注目を浴びている.本研究の目的は,その中でも,f電子の4重極相互作用によると思われる重い電子異常,あるいは超伝導を示すPrFe_4P_<12>,PrOs_4Sb_<12>などのPr充填化合物,および,非フェルミ液体異常,近藤半導体異常を示すCeRu_4Sb_<12>,CeOs_4Sb_<12>などのCe充填化合物に焦点を絞り,これらの物質の励起状態や構造の変化を中性子散乱およびX線回折により測定することにより,ミクロスコピックな観点からこれらの物質の電子状態を明らかにすることにある.本年度の研究は10月中旬に始まり,実質的に約5ヶ月しか研究期間がなかったが,この間に,特にCe充填スクッテルダイトCeOs_4Sb_<12>について,中性子散乱による磁気励起の観測等の研究を開始した.この物質は,スクッテルダイト化合物としては,初めての近藤半導体的振る舞いを示す系として興味が持たれており,CeNiSnなどこれまでに研究された近藤半導体物質と比較して研究することが必要である.本年度は,原研の中性子散乱施設にある3軸型分光器を用いて,単結晶試料を用いた中性子非弾性散乱の実験を行い,約6meV以下のエネルギーに,分散のある特異な磁気励起を見いだした.また,高エネルギー研中性子散乱施設において,粉末試料を用いた非弾性散乱実験を行った.その結果,磁化測定などから,約30meV付近にあると予想されていた結晶場励起は見いだせなかった.以上の実験結果については,現時点では,これを解釈するよいモデルはないが,今後の研究により解明されるものと思う.本研究ではまた,中性子散乱実験において用いるCeRu_4Sb_<12>の試料の作成も行い.良質の大型単結晶を得た.
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