研究概要 |
本研究で取り扱う吸着冷凍サイクルは二重効用蒸気再生サイクルである.本サイクルは2つの基本的な吸着サイクルから構成され,1つ目のサイクルからの排熱がもう1つの目のサイクルの駆動熱源として用いられる.カスケード的に熱エネルギーを用いることにより,サイクル内に投入される熱エネルギーの温度レベルは異なり,吸着熱交換器内の冷媒の作動圧力も大きく異なる.本サイクルは,冷媒の作動圧力の差を活用して冷媒循環量の増大を図り,性能を向上させることができる.研究では本サイクルの性能予測シミュレーションプログラムの作成と,吸着材の有効熱伝導率および伝熱面との間の熱抵抗の測定を行った. まずは平衡状態を仮定してサイクルの数学モデルを作成して性能の予測計算を行い,これと基本的な単段型サイクルの計算値と比較した.本サイクルの冷房能力は,成績係数COPと同様に,単段型サイクルの性能よりも優れていることが明らかになった.また二段型サイクルの性能計算値とも比較を行った.駆動温度が70℃以下の場合に本サイクルの冷房能力は二段サイクルよりも劣るが,駆動温度が65℃以上の場合に成績係数COPは優れていることがわかった.さらに,蒸気再生過程に吸着熱交換器への加熱および冷却を行った場合に最も冷房能力が大きくなり,低温度の排熱エネルギーを効果的に活用できることがわかった. ついで吸着材として活性炭繊維を用いた充てん層の有効熱伝導率と層と伝熱面との間の熱抵抗値を測定する装置を作成した.そして,充てん層の厚さや温度が有効熱伝導率や熱抵抗値に与える影響を調べた.実験は大気圧下で定常法によって行われた.有効熱伝導率はおおむね0.06Wm^<-1>K^<-1>であり,その温度依存性は小さいが,層の厚さには影響を受けることがわかった.
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