研究課題/領域番号 |
03F00124
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
基礎獣医学・基礎畜産学
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
藤崎 幸蔵 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授
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研究分担者 |
MYUNGIO You 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 日本学術振興会外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | マダニ / マダニ生物活性分子 / フタトゲチマダニ / バキュロウイルス組換え体 / キチナーゼ / バイオ殺ダニ剤 |
研究概要 |
マダニとその媒介疾病の防圧は、もっぱら各種の化学物質を殺ダニ剤として用いることによってこれまで行われてきた。しかし、近年、化学的殺ダニ剤に対する抵抗性マダニの出現、残留殺ダニ剤による環境・食物連鎖の汚染、強化された安全性試験による新規化合物開発経費の高騰などの問題が深刻化している。このため、現行のマダニ対策は抜本的な見直しを迫られており、化学的殺ダニ剤に代わりうる安全性・有効性・経済性に優れた新たなマダニ防除技術の開発が、今や世界的に焦眉の急務となっている。 このことから、本研究は、ダニの生存に重要な役割と機能を発揮する物質(マダニ生物活性分子tick bioactive-molecules:TBMと総称)の探索と特性解明を行う過程で得られた、組換え蛋白作成目的に作製したAcNPVなどのバキュロウイルス組換え体について、殺マダニ活性を検証し、バイオ殺ダニ剤としての可能性を追求することを目的として実施された。 すなわち、本研究では、フタトゲチマダニのキチナーゼを発現する組換え体バキュロウイルス(AcMNPV・CHT1)をまず作製し、このウイルスと発現キチナーゼを適用(topical application)後のフタトゲチマダニ(幼ダニ、若ダニ、成ダニ)の生存性に関し、ウイルスとキチナーゼに対する紫外線照射と各種気温・pHの影響などを検討し、生体外環境下における組換え体ウイルスの生存性(=安全性)を明らかにしようとした。次いで、哺乳類細胞に対するAcMNPV・CHT1の感染性(増殖性)の有無を調べ、人獣に対する安全性の確認も行った。最後に、AcMNPV・CHT1とピレスロイド系殺ダニ剤の併用による相乗効果の存否を検討し、バイオ殺ダニ剤の実用性に関しても知見を得ようとした。 検討の結果、高温(30℃以上)と紫外線照射によってAcMNPV・CHT1とこの組換え体発現キチナーゼの殺マダニ活性は、大幅に(最大60%まで)減少することが明らかになった。また、AcMNPV・CHT1と発現キチナーゼを混合した場合には、ウイルスあるいはキチナーゼ酵素を単独に用いた場合よりも迅速に殺マダニ活性が発揮されることが示された。一方、AcMNPV・CHT1は昆虫細胞では分子量116kDaのキチナーゼを発現できるが、哺乳類細胞のRK13細胞ではキチナーゼの産生が認められず、人獣などの哺乳類細胞では増殖・複製できないことが確認された。さらに、ピレスロイド系殺ダニ剤のFlumethrinとAcMNPV・CHT1を併用した場合、同一効果を得るために必要なFlumethrinの薬量をほぼ半分に減らしうることが明らかになった。 これらのAcMNPV・CHT1の安全性と有効性に関する成績は、新規バイオ殺ダニ剤としてのAcMNPV・CHT1の可能性と有望性の大きさを強く示唆するものであり、世界に先駆けてバイオ殺ダニ剤としてのTBM組換え体ウイルスの可能性を明らかにするものであった。今後、キチナーゼ以外のTBMの組換え体ウイルスの作製を行い、フタトゲチマダニ以外の多種類のマダニに対しても有用性を検討する必要があると思われる。
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