鉄は地球上に豊富に存在する元素であるから安価であり、また、多くの生命体にとって必須元素である。工業的な用途も広い。例えば、室温で磁性を発揮する酸化物であるγ-Fe_2O_3やFe_3O_4、BaO・6Fe_2O_3などは、安価・安全・安定な磁気記録材料として永らく利用されてきている。酸化鉄は、また、触媒としての利用価値も高いが、これはFe^<2+>とFe^<3+>の間の酸化還元が容易に起こるためである。 これらの機能は粒子サイズや形状により大きく変化するため、サイズ(サブミクロン程度)と形態(針状や板状など)の揃った微粒子を作製する技術は大いに進歩してきたが、さらに最近は、ナノメートルサイズへの展開が盛んである。 本研究では、ナノメーターサイズの酸化鉄を作製して、(1)新規なリチウムイオン二次電池の正極材料の開発、および(2)(生体)高分子との複合化により遺伝子機能やタンパク質の解析に利用できる材料を開発することを目指すものである。 本年度に主に水熱法などの方法により、機能性酸化鉄ナノ微粒子を作製し、合成条件についても詳しく検討した。合成した酸化鉄の微粒子はサイズと形態のそろった酸化鉄であり、面白い磁気性質を持つことが明らかにした。さらに合成温度や、反応時間や出発物質のpHなどを調整するにより酸化鉄微粒子のサイズや形状などを制御できる。最後に新規なリチウムイオン二次電池の正極材料の開発、および(生体)高分子との複合化により遺伝子機能やタンパク質の解析に利用できる材料を開発することを目指す。
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