酢酸菌はエタノールを酸化して酢酸を高濃度に培地中に蓄積する。そのため、他の細菌にみられない高い酢酸耐性能を有している。しかしながら、この酢酸耐性能は酢酸菌の菌株によっても大きく異なっており、特にヨーロッパで酢酸発酵に用いられているGluconoacetobacter europaeus(高度酢酸耐性菌)は15%もの高濃度の酢酸を蓄積する事ができるが、日本国内で用いられる酢酸菌Acetobacter aceti(中度酢酸耐性菌)は5-6%の酢酸しか蓄積することができない。本研究では、欧州の食酢産業で盛んに用いられている高度酢酸耐性菌とわが国で主に用いられている中度酢酸耐性菌の酢酸耐性機構を比較研究することで、酢酸菌の酢酸耐性機構とその機構に関与する遺伝子を明らかにするとともに、この酢酸耐性へのアルコール酸化反応に関与するアルコール脱水素酵素(ADH)機能の影響についても検討することを目的としている。 これまでに、Janja Trcek博士は、いくつかの高度酢酸耐性菌の分子系統学的解析をすすめるとともに、それらの菌株の実験室培養条件、細胞膜調製条件、ADH活性測定条件を検討して、それらの条件の確立に成功した。現在は、さらにそれら高度酢酸耐性菌からのADHの分離精製をすすめているところである。 それと並行して、松下は中度酢酸耐性菌におけるADH機能の解明をそれらの欠損変異株を用いることですすめるとともに、中度酢酸耐性菌におけるの酢酸耐性に関連する膜構造成分および細胞膜タンパク質成分の解析をすすめているところである。
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