本研究の目的は、半導体技術を援用したマイクロ・ナノ加工によりGHz帯の振動子を作り、無線情報通信に用いる送受信機の格段の性能向上と、小型1チップ化を図るものである。 このため本研究では、近年急速な発展を遂げているマイクロマシーニング技術に着目し、これを用いて10〜100ナノメートル級寸法のシリコン振動子を作り、高性能無線送信機に必要なGHz帯の共同周波数の実現を目指す。10nmを切る立体微細加工ができるだけでなく、CMOSチップの製造プロセスと適合性がよいマイクロマシーニング技術を用いて、1チップの集積化を目指す。 (1)ナノ加工プロセスの検討 振動子を動かす静電駆動用のギャップを数10nm程度に縮めることで、高周波回路の低電圧を加えただけで励振を行えるように設計した。このデバイスの実現には、100nm以下のパターンを形成し、それに応じてシリコン膜を加工するプロセスが必須である。このため電子ビーム露光装置によるリソグラフィーと、原子間力顕微鏡(AFM)のプローブで局所陽極酸化をするAFMリソグラフィーの両方について、微細なナノパターンを再現性よく描画できる条件を探索した。さらに、このパターンに基づいてシリコン膜をエッチングするプロセスを検討中である。 (2)トンネル電流に基づく振動検出法の検討 振動子を小型化すると振動振幅も小さくなり、検出方法が問題となる。本研究では、真空トンネル電流が0.1nm程度のギャップ変化に応じて一桁増減する現象に着目し、マイクロマシン応用トンネル電流センサを適用することで、超高感度の振動検出の実現を検討した。これまで我々の研究室で試作したトンネル電流センサを更に単純化したデバイスを設計し、静電駆動でギャップを狭めトンネル電流検出を試みている。
|