研究概要 |
モノオレイン(MO)の膜は過剰水の存在下でキュービック相(Q^<224>相)であるが、高い表面電荷密度を持つジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)とMOの混合脂質膜は、L_α相の多重層リポソーム(MLV)を形成することを我々はすでに見出している(Biophys.J.81,983-993,2001)。本研究ではまず、L_α相のDOPA/MO-MLVに対するCa^<2+>の効果をX線小角散乱(SAXS)により調べたが、キュービック相には相転移しなかった。そこで、負電荷を持つ脂質としてDOPAの代わりにジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)を用いて、MOの構造安定性に対する表面電荷密度の効果をSAXSにより調べた。DOPGの濃度が増大するにつれて、Q^<224>相から別のキュービック相であるQ^<229>相に相転移し、次にL_α相に相転移した。L_α相のDOPG/MO-MLVに対するCa^<2+>の効果を調べたところ、低濃度のCa^<2+>がキュービック相(Q^<224>相およびQ^<229>相)を誘起することを見出した。このことは、低濃度のCa^<2+>によりこの膜の相構造を効果的に制御できることを示している。また、DOPG/MOの単分子膜の自発曲率はCa^<2+>濃度の増加につれて増大した。この結果より、Ca^<2+>によるL_α相からキュービック相への相転移においては、単分子膜の自発曲率の増加による弾性エネルギーの変化が一つの主要な要因であると考えられる。さらに、直径が100nm程度のDOPG/MO膜のLUV(Large Unilamellar Vesicle)を作成し、Ca^<2+>との相互作用をSAXSにより調べた。その結果、低濃度のCa^<2+>がLUVをキュービック相に構造転換することを見出した。
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