研究概要 |
本研究の目的は,上昇流嫌気性スラッジブランケット反応器(UASB)という高濃度生物保持が可能な嫌気性バイオリアクターと、その後段に下降流ポリウレタン担体懸垂方式(DHS)の好気性バイオリアクターを接続する、新規の廃水処理プロセスを開発することである。DHS(Downflow Hanging)法はスポンジを固定化担体とした新規の散水ろ床法であり、このシステムは(1)エアレーションを必要としない(2)余剰汚泥が必要としない(3)維持管理が容易,などの優れた利点を有している。 そこで本研究室では数年来、発展途上国のための低コストで維持管理が容易な下水処理システムとして、UASBと懸垂型スポンジ(DHS)リアクターを組み合わせたシステムを提案してきた。懸垂型スポンジカーテンリアクター第二世代型システム(DHS-G2)、第三世代型(G3)DHSを経て、その後改良型の新たな第四世代型(G4)DHSシステムを開発し実下水を用いた連続運転を行った。全BODの除去率は、システム全体で95%以上を達成し、卓越した有機物除去能が得られた。またCOD除去率は91%、全窒素の除去率は33%を達成し、さらにSS除去率は最も高く94.4%を達成した。 DHS-G4流下高さ方向での水質のプロファイルから微生物によって易分解性有機物はリアクター上部で浄化され、下部で硝化反応が進行していることが明らかになった。 さらに、インド国カルナール下水処理場にて,我々の提案するUASB法+DHS法の実規模実証実験を行った.2年を越える期間,安定した運転を維持し,最終処理水の全BODは平均5mg/l,浮遊性物質は平均10mg/lであり排出基準を十分に満たす処理水質を得た.また,ふん便性大腸菌群は4乗オーダーまで除去された. 本システムは卓越した有機物除去能90%以上および高い硝化能70%を示し、最終的に得られる処理水は、発展途上国の排出基準を満たす値を示していることから、エネルギー最小消費で維持管理が容易なプロセスとして発展途上国への適応が十分可能であるという見解が得られた。
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