研究概要 |
本研究は、多数の植物のESTデータとの比較を行うと共に、代謝経路のタンパク質のデータベースと統合することによって統合的にオオムギの発現遺伝子を研究しようとするものである。オオムギのESTの解析を開始する前に、まず植物全体のEST解析を行い植物の代謝経路とESTを関連づけたデータベース作成が緊急の課題であると判断し、本年度は植物全体のEST解析研究を先行させた。京都大学化学研究所設置のスーパーコンピュータを利用し、オオムギをはじめとする植物180種のEST配列データをデータベースNCBI、dbESTからダウンロードし、polyA/Tやlow-complex配列を除き、50P以上の配列を選択した。そして、Cross_MatchやRepeatsMaskerを用いて反復配列やベクター配列を除去したEST配列データを得た。この合計5,373,252EST配列をCAP3を用いて分類すると、defaultの設定では516,659のContigsと833,887のSingletに、stringentの設定では542,985のContigsと1,161,681のSingletに分類されることを明らかにした。また、以下の成果も得た。 (1)オオムギ特異的なEST座乗染色体の決定:岡山大学生物資源研究所からオオムギ特異的ESTのPCRプライマー約1500組の分譲を受け、オオムギ染色体添加7系統についてPCRによるDNA増幅の有無を調査した。その結果、約700PCRプライマーを単一の染色体に割付けることができ、ESTは、ほぼ均一に7本のオオムギ染色体に分布していることが明らかになった。 (2)染色体特異的ESTの物理的マッピング:オオムギ7H染色体に割付けられたESTを約20の7Hの欠失染色体を用いて物理的マッピングを行った。その結果、ESTは、ほぼ染色体全長にわたって分布していることが明らかになり、オオムギESTの物理的染色体地図をオオムギ染色体断片系統を利用して効率よく作成することが可能であること証明した。 (3)5H染色体断片系統の育成:5H染色体の断片を有するパンコムギ系統をGISH、FISH、染色体分染を利用して選抜し、5H断片をホモ接合又はヘミ接合で有する系統を約70系統得た。
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