研究概要 |
本研究の目的は,空間P2P/GRIDシステムに対し,効率の良い検索と負荷分散の手法を取り入れることである.これにより,既存の空間P2P/GRIDシステムの問題である負荷の集中や応答の遅延といった問題を解決し,デペンダブルなシステムを構築することが可能となる. 1.検索手法の提案 空間P2P/GRIDシステムにおける効率的な検索を実現するため,P2PR-treeと呼ぶインデックス木を提案した.P2PR-treeはR木を拡張したデータ構造で,木の構築や維持は完全に非集中で行うことができるため,スケーラブルである.また,P2PR-treeに対するクエリは空間密度に基づいたヒューリスティクスにより,適切なサーバ(ピア)に転送される.性能実験の結果はP2PR-treeが空間P2P/GRIDシステムに適したものであることを示している. 2.負荷分散手法の提案 空間P2P/GRIDシステムにおける負荷分散は,次の手順によって行う.まず,同一LAN上に属するノードからなるクラスタを作成し,システム全体をクラスタの集合と見なす.これにより負荷分散の問題をクラスタ内とクラスタ間で分けて考えることができる.次に,検索要求の頻度の高いデータを他のノードに動的に複製することで負荷を分散する.この時,複製する先は検索要求がもっとも多かったノード,またはその近傍とする.性能実験の結果,提案した負荷分散技術は空間P2P/GRID環境におけるspatial joinなどの複雑なクエリに対して,大幅に処理速度を向上させることができる. また,検索手法・負荷分散手法のいずれにおいても,ノードの不均一性,スケーラビリティ,動的性能(個々のノードが常に利用可能とは限らないため)について,総合的に検討を行った. 本研究完了後の課題として,提案手法のモバイルコンピューテイング環境への適用を考えている.
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