研究概要 |
低温で多重極モーメントによる奇妙な相転移を示すことで知られているCeB_6は,典型的高濃度近藤物質としてもよく知られ,古くから近藤効果の研究対象として電気抵抗,磁化,比熱を中心に盛んに研究されてきた。近藤効果に伴う巨大熱起電力について従来多くの報告があるが,希釈近藤系から高濃度近藤系までの信頼できる系統的な研究がないことに注目し,Ce_xLa_<1-x>B_6の全x領域における熱起電力の研究を行った。またこの過程で,磁場中を含む非常に高精度よく熱起電力測定を可能にする測定システムを構築した。本研究で以下のような結果を得た。(1)Ce希釈系では近藤温度T_Kより少し低温側に熱起電力のピークが存在するが,Ce濃度を増すとピーク温度は高温側にシフトし,CeB_6での8Kで止まる。このピークはTKがCe濃度の増大とともに高くなるのではなく,Ce-Ce間のRKKY相互作用によるものであることが,同時に研究しているCe_xR_<1-x>_B6(R=Pr, Nd)の熱起電力の結果から明らかになった。(2)熱起電力の磁場依存性もCe濃度を増すと奇妙なものになることが明らかになった。希釈系では磁場とともに減少し理論と合致するが,Ce濃度を増すと,低磁場では磁場増大とともに増大し,高磁場で減少する。一方,電気抵抗の磁場依存性はCe濃度によらず減少し,近藤効果が壊れるとして理解される。熱起電力の低磁場での増大はCe-Ce間相互作用がなんらかの形で関与しているのは間違いないが,今後,より詳細な研究を必要とする。(3)Ce_xPr_<1-x>_B6,Ce_xNd_<1-x>B_6の熱起電力の測定から,前者では反強磁性秩序状態で近藤効果が壊れるにに後者では生き残るという奇妙な結果を得た。この原因は現在わかっておらず,今後さらに詳しい研究を必要とする。
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