研究概要 |
鱗翅目昆虫エビガラスズメ(Agrius convolvuli)の羽ばたき飛行を支える飛翔筋の役割を明らかにするため、超小型テレメータ、高速度撮影装置を用いて、自由飛行中の飛翔筋活動と実際の運動・羽ばたきを同時計測した。また、これまでの課題であったテレメータの多チャンネル化を進め、従来用いてきた2チャンネルテレメータ(0.25g)の他に、3、4チャンネルテレメータ(0.32〜0.42g)を開発し、スズメガ(1g)に装着した。飛行実験は風速2ms^<-1>の風洞中で行った。3、4チャンネルテレメータは、昆虫への重量負荷は増大したものの、3〜6つの間接・直接飛翔筋の同時計測に初めて成功した。また、テレメータの重量負荷により、翅打ち上げ時に活動する2つの飛翔筋活動の位相遅れ、,および、計測したすべての飛翔筋における活動電位スパイク数の増加を確認した。このことは、近い位相で活動する飛翔筋間には共通のタイミング制御が、また、負荷に応じた全飛翔筋にわたる斉一な収縮制御が存在することを示唆するものである。一方、風速2ms^<-1>向い風条件下での間接飛翔筋活動周波数は、気流速度と相関を示した。間接飛翔筋は胸部の弾性エネルギーを利用して翅を駆動する飛翔筋であり、共振周波数に基づく羽ばたきを行うと考えられている。本研究で観察された間接飛翔筋活動周波数の変化は、高速度撮影装置によって得られた羽ばたき周波数と対応したことから、胸部変形による弾性の制御、またはそれに抗する羽ばたき周波数制御が行われている可能性が考えられる。今後、胸部外骨格に付着する他の飛翔筋の同時計測を進め、飛翔筋による羽ばたき制御の理解をさらに深める予定である。
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