研究概要 |
本年度は,「怒りコントロール」に関して,より応用的な研究を行った.日常的に感じる些細な怒り,すなわち,腹立ちに関する研究である.日常的な怒り感情は,何日も継続するような強い感情よりも,すぐに忘れてしまうような"些細な腹立ち"が多いと考えられる.また,このような日常的な腹立ちの処理の失敗が強い怒り感情の喚起につながり,さらに,攻撃行動を促進する可能性がある.こうした観点から,大学生27名の日常的な腹立ち経験とその処理に関して自由記述の回答をもとに,抽出・分類を行った.その際,日常的な腹立ち経験がすぐに忘れられてしまう可能性を考慮し,日記法を用いた研究を試みた.特に,近年,急速に普及している携帯電話に注目し,携帯電話を利用して検討を行った. 自由記述の回答を分類した結果,まず,腹立ち経験の頻度に関しては,1週間の間で腹立ちを感じた頻度は平均4.3回であり,2日に一度は腹立ちを感じていることが示された.次に,腹立ちの対象としては,友人のような身近なものが多い一方,見知らぬ人に対しても腹立ちを多く感じることが示された.腹立ちを感じ場面については,自分勝手な振る舞いや不誠実な振る舞いに腹立ちを感じやすかった.最後に,行動については「何もしない」が約30%を占め,腹立ちを感じても何もせずやり過ごすことで,時間経過にまかせ,自然に忘れるような処理をしていると考えられる. 携帯電話による回答と調査用紙による回答を比較した結果,回答数や回答された経験(相手・出来事・感情的強さ)に差は見られず,二つの方法でほとんど回答に差がなかった.携帯電話では,電波の状態により回答が難しいこともあったが,調査用紙を持ち運ぶ負担感がなく,大学生の90%以上が携帯電話を利用している現在,携帯電話にて回答することは,調査用紙を利用することよりも,研究協力者にとっては身近で気軽に回答できることが考えられる.
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