研究概要 |
1.空間グラフの局所変形と,代数的不変量の研究 空間グラフのΔ辺ホモトピーは,代表者が数年前に導入した,同一辺上のΔ変形で張られる同値関係である.本年度は,Δ辺ホモトピーに関する自明性定理,即ち,グラフがいつ互いにΔ辺ホモトピックでない2つの空間埋め込みを持つかを,完全に決定した.また,渋谷 哲夫と安原 晃により,任意の境界絡み目は自明な絡み目にΔ辺ホモトピックであることが最近示されたが,代表者は,互いにΔ辺ホモトピックでない境界空間手錠グラフの無限族が存在することを示した.これらは,代表者によって構成された,結び目成分のバンド和を用いた代数的不変量により区別される.また,スライス絡み目が自明な絡み目にΔ辺ホモトピックであるかどうかは未解決であるが,代表者は,互いにΔ辺ホモトピックでないスライス空間手錠グラフの無限族が存在することも示した 2.空間グラフの射影図の研究 グラフの平面への正則射影は,どう3次元空間に持ち上げても非自明な空間グラフが生じるとき,非自明射影と呼ばれ,また,持ち上げ方に依らず生じる空間グラフが一意であるとき,同一視可能射影と呼ばれる.非自明射影を持たないグラフは自明化可能であるといい,自明化可能性に関する障害集合Ωの決定は大変重要な問題である.代表者は,小沢 誠,谷山 公規,堤 幸博との共同研究において,Ωの元を新たに9つ発見した.また,グラフの平面への正則射影が同一視可能射影である為の必要十分条件は,どう持ち上げても自明な空間グラフが生じることであることを示した. 一方,グラフの平面への正則射影は,3次元空間への持ち上げ方が異なると生じる空間グラフも異なるならば,完全区別可能射影と呼ばれる.これは代表者によって導入された概念である.自明化可能グラフの完全区別可能射影は平面への埋め込みに限り,また自明化不可能平面的グラフの非自明な完全区別可能射影は非自明射影であることを示した.更にn頂点完全グラフやm+n頂点完全2部グラフは完全区別可能射影を持つことも示した.
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