研究概要 |
量子論の基礎を形成する二つの概念が「状態」と「力学」である.本研究は,未だ発達段階にある量子開放系における状態と力学の基礎的研究を行い,特に数学的厳密性を保持した集合論的なアプローチ(例として力学的半群など)によって,状態と力学の空間の構造を探ってきた.以下に16年度に行った研究成果の概要を紹介する。状態に関しては、昨年度に行ったBlochベクトル空間の解析的特徴づけに対して、状態空間の幾何学的構造を探る方法(球座標による解析によりスペクトルの特徴づけを行う方法)を提案し、空間の双対構造などの非自明な性質を明らかにした(Physics Letters Aに投稿中)。また、量子相関に関するLandau-d'Espagnatの命題に関して、部分系が混合状態にある場合への拡張、また代数的場の理論を用いて無限自由度系の場合に拡張した(投稿準備中)。さらには、量子エンタングルメントの正写像に基づく分類(Open Systems and Information Dynamicsに掲載予定)、またBlochベクトルの幾何学的情報を利用して新しい正写像のクラスを与えるなどした(Open Systems and Information Dynamicsに掲載予定)。力学に関しては、弱結合系における相関のダイナミカルな消失現象を見出し、初期時刻における相関の情報が散逸の時間スケールにおいて実験にかからないことを理論的に明らかにした(投稿準備中)。一方で、純粋度のショートタイムの情報を利用することで、相関の存在を部分系の情報から引き出す条件を見出し、Landau-d'Espagnatの命題の"逆"に相当する一般的性質を発見した(投稿準備中)。
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