研究概要 |
ガス透過膜内側から外側に付着したバイオフィルムに直接酸素を供給可能なメンブレンエアレーション法を導入し,有機物・窒素・リンの同時除去が可能なSBMBfR (Sequencing Batch Membrane Biofilm Reactor)プロセスの構築を目指した。本プロセスはバイオフィルム内のみで好気環境を創製することが鍵となるため,ガス透過膜上に形成されるバイオフィルム内の活性および生態構造を制御する操作因子を明らかにすることが必要不可欠である。そこで,1次元バイオフィルムモデルを構築し,バイオフィルムの性能を制御することが可能な操作因子の解明を行った。まず,モデルの構築によりバイオフィルム内の酸素およびアンモニアに関する物質移動現象をシミュレートでき,処理性能を容易に予測することが可能となった。また,供給酸素とアンモニアの流束比(J_<O2>/J_<NH4>比)が硝化能を左右する最も重要な因子であり,J_<O2>/J_<NH4>比の制御により安定した硝化能を維持できる可能性を示唆した。以上の検討よりガス透過膜上に固定化した硝化細菌のバイオフィルムをSBMBfRに適用した。約120日間の連続運転において窒素・リンともに安定した除去が行われていることが示唆され,有機物・窒素・リンの平均除去率はそれぞれ97,96,86%に達した。この結果より,SBMBfRを用いることで有機物・窒素・リンを単一槽にて同時除去できることが示された。また,SBMBfR内の各部位における微生物生態分布を追跡した結果,硝化細菌がガス透過膜複合体上に,バルク液中にはリン蓄積能を有する細菌(脱窒性リン蓄積細菌を含む)がそれぞれ維持されていることが明らかになった。以上より,SBMBfR内の環境が異なる部位において異なる機能を有する細菌群が維持され,コンセプト通りに有機物・窒素・リンの除去が進行していることが示唆された。
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