研究概要 |
超音波を用いて構造部材内に存在する局所的欠陥群の3次元形状・大きさ・分布形態を,高精度かつ高速にイメージングする3次元逆散乱解析法を構築するために,本年度は以下の事柄について検討を行った. 1.3次元逆散乱解析法の開発 既に開発済みである2次元逆散乱解析法の原理を拡張して,3次元欠陥像の再構成のための線形化逆散乱解析アルゴリズムを定式化し,次の二つのイメージング手法を整備した.一つは欠陥内部を再構成する3次元ボルン逆解析であり,もう一つは欠陥境界を再構成するキルヒホフ逆解析である.本年度は境界要素法を用いた動弾性解析により欠陥像の再構成シミュレーションを行い,両逆解析の欠陥再生能を検証した.得られたイメージング像は3-Dグラフィック化され,欠陥諸量を空間的に把握することが可能である. 2.高速逆散乱解析法 欠陥による散乱波データを解析してリアルタイムに再構成像を提示するために,逆散乱解析法の高速化を試みた.欠陥からの散乱振幅データを像空間に変換する過程に,画像処理の原理を応用した3次元高速フーリエ変換(3D-FFT)を活用することで,欠陥像の高速イメージングが可能となった. 3.超音波計測系のモデル化 次年度の超音波計測実験における準備として,計測装置による超音波送・受信システムの設計に関する基礎的検討を行った.実際の超音波計測では,欠陥に対して超音波が適切に送信されるように探触子の大きさや設置位置等を調整する必要がある.ここでは超音波伝播経路を明らかにするために,線形システム論に基づいて超音波送受信系をモデル化し,超音波伝播・散乱シミュレーションを行った.線形化逆散乱解析では,欠陥に対して十分広いビーム幅が必要であることが検証されており,この条件を満足するためには欠陥と探触子の距離を大きく設定することが重要であることを示した.
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